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宗方姉妹

宗方姉妹

題名は「むなかた・しまい」ではなく「むねかた・きょうだい」と読みます。今では映画ヒットの方程式となった「ベストセラー小説の映像化」を小津が初めて手がけた作品。原作は『鞍馬天狗』で有名な大仏次郎が1940年末に朝日新聞に連載した長編小説。オリジナル・ストーリーにこだわってきた小津はその商業的な手法に懐疑的でしたが、「人気文芸作家+巨匠監督」という映画会社のもくろみは大当たりし、この年の興行配給第一位となりました。
真面目で淑やかな節子、陽気で奔放な満里子――――対照的なふたりの姉妹は、京都で病症の身にある父親の身を案じながらも、東京でふたり仲良く生活していた。
節子は、自分が雇われマダムをするバーの資金難、失業中の夫亮助の退廃的な生活に苦悩する毎日。そんな姉の姿を憂慮した満智子は、節子のかつての恋人である田村と寄りを戻させようといろいろと画策するのであった……。
古風な姉(日本的)と進歩的な妹(アメリカ的)。そのふたりの反発を通して、戦後日本の混沌とした世相がうまく描かれています。


2012.01.25(Wed) - Review on


娘の結婚

娘の結婚

2003年、小津生誕100周年を記念し、WOWOWのオリジナルドラマ・プロジェクト「ドラマW」の7作目として製作された『晩春』のリメイク。小津を敬愛する市川昆が監督。この日本映画界の巨匠がテレビドラマを撮ったということに違和感を感じる人がいるかもしれませんが、実は市川は、テレビ黎明期からこの新しいメディアに積極的に進出してきた映画監督としてのパイオニア。大原麗子を起用したサントリーレッド(ウィスキー)の「すこし愛して、なが〜く愛して」シリーズCF、中村敦夫主演『木枯し紋次郎』などは彼の代表作。このメディアを横断して映像を表現するというスタイルを継承した代表が、市川を崇拝し、『市川昆物語』を監督した“映像作家”の岩井俊二でしょう。
『晩春』を語るとき必ず議論になるのが、娘が父に抱く性的コンプレックス(エレクトラコンプレックス)からの解放というテーマ。オリジナルの笠智衆と原節子ではピンときませんでしたが、本作での長塚京三と鈴木京香というキャスティングで、なるほど納得させられるものがありました。


2011.06.25(Sat) - Review on


晩春

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晩春 ★★★★★

黒澤明とともに、世界の映画人から今だ熱烈な支持を集める小津安二郎。監督人生35年、戦争を挟んで残した54本の名作の数々。その中でも、戦後小津作品の基調を定めた、彼の作品暦の中でも特に重要な作品。小津組の常連女優となる原節子と初めてコンビを組み、このときの主人公名“紀子”で、後の『麦秋』『東京物語』でも登場することになります。
早くに妻を亡くし、それ以来、ひとり娘の紀子に面倒をかけてきた周吉は、自分のせいで彼女が婚期を逃していることが気がかりでならない。
結婚したらひとりになる自分の生活を憂う紀子を安心させようと、妹のマサが持ってきた縁談話にのって再婚するという嘘をつく周吉。そんな父の姿に嫌悪感を抱くも説得され、父娘水入らずの最後の京都旅行に出かけるのであったが……。
ボクの中では、小津と黒澤が日本映画の二大雄。どちらも日本・日本人を描き、その価値を世界に認めさせた巨匠。しかし、そのスタイルは大きく違います。そこあたりを子細に分析した、ボクのためにあるような?名著があるので紹介しておきます。

 

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2011.05.25(Wed) - Review on


バベル

バベル 

メキシコ映画界の巨匠アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが、監督デビュー以来一貫してこだわってきた「複数の物語を展開させひとつの結末に収斂させていく」という作風が世界的に評価され、カンヌ国際映画祭監督賞、ゴールデン・グローブ作品賞などを受賞した記念すべき作品。日本ではそれまでほぼ無名だった菊池凛子がアカデミー助演女優賞にノミネートされ、彼女の名を世界に知らしめるキッカケになりました。
東京のタワーマンションに聾唖の娘と住む中年男は、趣味の狩で訪れたモロッコで仲良くなった現地ガイドに自分のライフルを譲る。それを闇で転売されたモロッコの友人は、ジャッカル退治のためふたりの息子にライフルを与えることに。その性能を試そうと撃った弾丸がアメリカ人旅行者を乗せた観光バスに当り、夫妻で参加していた婦人が負傷してしまう。その知らせを聞いたメキシコ人のメイドは、実子の結婚式に参加するためメキシコに向かうのであった……。
本作の評価はかなり二分したようですが、その分れ目はタイトルでもある旧約聖書「バベルの塔」の世界を作品中に見出せるかどうか。これは解釈という名の想像力の世界。ボクは、聖書の言語の断絶を、親子間のコミュニケーションのそれに重ね合わせましたけど。


2011.05.20(Fri) - Review on


僕の美しい人だから

僕の美しい人だから

監督『愛と悲しみの果て』、製作者『推定無罪』、俳優『アイズワイドシャット』と、マルチな才能を開花させたアメリカを代表する映画人シドニー・ポラックが、全米ベストセラー小説を映画化した大人のラブストーリー。
27歳のエリート広告マン、マックスは、ハンバーショップ「ホワイト・パレス」で働く43歳の中年ウェイトレス、ノラにクレームを付けていた――――「買ったハンバーガーの数が足りない」と。
その夜、偶然立ち寄ったバーでノラに再会したマックスは、話の流れで半ば無理やり彼女を家まで送らされる羽目に。泥酔していた彼はそのまま眠ってしまうも、不思議な感覚で目を覚ますと自分の股間にノラの顔が。抵抗しながらもこれまで味わったことのない快感に溺れるマックス。この日から彼は、ノラの家に通いだすことになるのだったが……。
年齢的にも社会的にも大きな差を持つ男女が紆余曲折の後に結ばれる――――というありきたりな物語に絶妙なスパイスを効かせているのがスーザン・サランドンの熱演。酸いも甘いも乗り越えた40過ぎの中年女性ならではの色香を見事に醸し出しています。


2011.05.20(Fri) - Review on


ガタカ

ガタカ

 GATTACA ★★★★★

生まれか育ちか、気質か性格か、遺伝か環境か――――ゲノム解明の行く末、その陰の姿を見事に描ききったアンドリュー・ニコル監督のデビュー作。
優秀な遺伝子を持つ者、遺伝子操作をした者が「適格者」とされ、自然出産で生まれた者が「不適格者」とされる遺伝子の優性があらゆる基準となった近未来社会。
宇宙飛行士に憧れ勉学に励み体を鍛え上げてきた主人公のヴィンセント。素質は十分すぎるのだが、自然出産で生まれてきた彼はあくまで「不適格者」。DNAが支配する社会では、どんなに頑張ったとしても遺伝子の優性を超えた職業選択は不可能。そんな彼の下に「適格者」のIDを売買するDNAブローカーが現れるのであったが……。
バイオの世界では、「人のパーソナリティのおよそ半分は遺伝によって決められる」というのはすでに定説。つまりは生まれた瞬間(というか胎児のとき)に大まかな自分の将来が読めてしまう。そんな時代が進化すれば、占いという(市場規模一兆円の)疑似科学は一網打尽に蹴散らされてしまうでしょうね。


2011.04.14(Thu) - Review on


レ・ブロンゼ/再会と友情に乾杯!

レ・ブロンゼ

ルコントの知名度を一気に高めることになったフレンチ・コメディの秀作『レ・ブロンゼ 日焼けした連中』(1978年)、その続編『レ・ブロンゼ スキーへ行く』(1979年)。この2作に登場していた男女の姿を、なんと27年(四半世紀!)という歳月を経て描いた同窓会的お騒がせ映画。
主人公の6人の男女がコートジボアールのバカンス村で出会ってから27年。彼ら彼女らはこの間ずっと親交を暖め続け、毎年夏には、仲間のひとりポペイが支配人を務める海辺の豪華リゾートで休暇を過ごすことにしていた。
今年も全員が集まってくるも、ポペイは不倫相手の美人シェフとホテルの実質オーナーである妻との板ばさみ。手術ミスの裁判沙汰で無一文になった医師のジェロームは別れた妻ジジに未練たらたら。そのジジと恋愛関係にあるジャン=クロードは若さにしがみついてばかり。眼鏡店を経営するベルナールとその妻ナタリーは息子がゲイだと知って大混乱――――と皆問題を抱えていたのだった……。
フランス人のメンタリティを理解したいならレ・ブロンゼ3部作がいいかも。だって『〜日焼けした連中』はフランス全土で55万人、本作は人口の17%にあたる1030万人が観たというんだから。


2011.04.14(Thu) - Review on


ぼくの大切なともだち

ぼくの大切なともだち

『タンデム』『列車に乗った男』に続く中年男の友情を描いたルコント作。フランスを代表する演技派男優ダニエル・オートゥイユと喜劇界の新鋭ダニー・ブーンが、コミカルながらもほろりと泣ける一級の悲喜劇を織り成しています。
傲慢で金持ちの美術商フランソワは、自分の誕生日パーティに集まった全員から「お前には親友と呼べる人はいない。だから、死んだとしても誰も葬式にはこないだろう」と指摘されショックを受ける。「そんなことはない!」とむきになったフランソワは、その場にいた共同経営者のカトリーヌに10日以内に親友を連れてくると宣言する。
さっそく“友人(と信じていた)リスト”を作り会いに行くも、誰ひとりとして自分を親友だとは思っていなかったことを知り愕然とするフランソワ。そんなとき、偶然出会ったフレンドリーなタクシー運転手ブリュノから、人と仲良くなるコツを学ぼうとするのだったが……。
「愛は金で買えるが、友情は決して買えない」という名台詞が男心に突き刺さる。自分に置きかえて考えさせられましたね、親友と呼べる友は何人いるだろうと。


2011.04.14(Thu) - Review on


パトリス・ルコントのドゴラ

パトリス・ルコントのドゴラ

ルコントが挑んだ斬新な音楽と映像の融合作。フランスの音楽家エティエンヌ・ペルションの楽曲『ドゴラ』にのせて、カンボジアの日常が一切の台詞なしにつづられていきます。
モーターサイクルに乗ってプノンペンの通りを走る無数の人々。頑強そうな古いトラックに乗りオークル色の埃にまみれながら移動する人々。世界最大の屋外ゴミ捨て場でモノを漁る、ガソリンスタンドで車を洗う子供たち。そして、田舎道を自転車で走る少女たちのシルエット――――その姿には生命の力が満ち溢れていた……。
カンボジアに生きる人々の生命力に感銘したルコントは、「役者も台詞も言葉もない、ただ純粋に感情だけに訴えかける音楽映画を撮ってみたい」という長年の夢を本作で実現させました。そのため、元々は25分しかなかった楽曲『ドゴラ』をエティエンヌに依頼して21曲からなる80分ほどの長さに編集してもらい、それを物語の尺としたらしい。ある意味、とっても長いPVとも言えるかも。
ルコントの訴えを感じることができるかどうか、観る者の感性が大いに試される作品。五感フル動員でかかっていかないと、簡単に透かされてしまいますからご注意を。


2011.03.15(Tue) - Review on


親密すぎるうちあけ話

親密すぎるうちあけ話

発行部数30万部を誇るフランスでいちばんの映画雑誌プルミエールで「ルコントの最高作!」と大絶賛され、アメリカでは前作『列車に乗った男』に次ぐロングランを記録した愛の巨匠による一級のロマンティック・コメディ。
離婚後、孤独な日々を送る会計士ウィリアムの事務所に「18時に予約をしている」という美女アンヌが訪ねてくる。身に覚えのないアポイントメントに当惑するウィリアムであったが、成り行きで彼女の話を聞くことに。
堰を切ったように、一方的に冷え切った夫婦関係について語り始めるアンヌ。そして彼女は、次回のカウンセリングの予約をして早々と事務所を立ち去っていくのだった……。
同じフロアにある「精神科医」と「会計士」の事務所のドアをたまたま間違えてノックしてしまったことから始まるラブストーリー。カウンセリングという名の感情の駆け引きを通して渾然一体化していく男女の姿を描いたルコントの演出は秀逸。確かに皆、自分の“心のドア”を誰かにノックして欲しいという願望を持っているんですよね。


2011.03.15(Tue) - Review on


列車に乗った男

列車に乗った男

愛の巨匠と称され男女の運命的な愛を描いてきたルコントが、初めて男たちの愛――――ダンディズム――――を取り上げた意欲作。ベネチア国際映画祭コンペティション部門での上映で熱狂的に支持され、観客選出による作品賞・男優賞を受賞。国内で20万人を超す観客を動員する大ヒットとなり、ルコントの新たな境地を切り開きました。
シーズンオフのリゾート地に降り立った見るからに訳ありの中年男ミランは、頭痛薬を買おうと立ち寄ったドラッグストアで出会った初老の男マネスキエに招かれ彼の家に滞在することに。
15年間続けたサーカスのスタントマンの仕事を引退し、今は銀行強盗家業に身を染めているアウトローのミラン。変化を嫌い、繰り返しの日々を平々凡々に過ごすだけの元フランス語教師マネスキエ。まったく共通点のないふたりだったが、互いに自分の欠落している部分を相手の人生に見るかのように交流を深めていくのであった……。
死を通すことで“もうひとつの人生”という究極の夢を実現させる男たち――――その美しくも切ない姿こそまさにダンディズム。男専門の映画かなぁ。



2011.01.20(Thu) - Review on


歓楽通り

 歓楽通り

1945年。娼館末期のパリを舞台に、無償の愛とはという究極の問いに迫ったルコントの美しくも哀しいラブストーリー。
パリの歓楽通りにある娼館オリエンタル・パレス。客と娼婦の“アクシデント”で生を授かったプチ・ルイは、娼館の中で育ち、娼婦の世話を焼くだけにその半生を費やしてきた。
そんなある日、ルイは新しく店に入ってきた薄幸の娼婦マリオンに一目惚れし、自分の一生をかけて彼女の世話をすることを誓う。しかし、自分の出自にコンプレックスを抱くルイは「ボクはあなたにふさわしくない。君を笑顔にできる男が必要なんだ」と、自らの愛の感情を押し殺し、彼女の恋愛を支援しようと徹するのであったが……。
ボクの中ではいちばんのルコント作。愛に無垢なルイ、未来を切望するマリオン、そして仲間のため身銭を切る娼婦たち――――彼ら彼女らに共通しているのは人生の挫折感。だからこそ他人に優しくなれる、他人の幸せを自分のものとして感じられる。挫折を味わったことのないという輩には理解できないでしょうが。


2011.01.20(Thu) - Review on


橋の上の娘

橋の上の娘

ルコントが、モノクロームで撮り上げた甘美な純愛作品。フランスを代表する男優、ダニエル・オートゥイユがセザール賞主演男優賞に輝きました。
男運が悪く薄幸の娘アデルは、パリのセーヌ川に架かる橋の上から投身自殺しようとしていたところをナイフ投げの曲芸師ガボールに命を救われる。的となる相棒を探していたガボールは、彼女を説得し、コンビを組んで巡業に出ることに。
訪れる先々では、アデルの美貌も手伝い喝采を浴びることになるも、彼女の性癖が災いし、ふたりの関係に亀裂が入ってしまうのだった……。
別離したふたりが紆余曲折の後、橋の上で再会――――でも場所はパリではなくイスタンブール――――という顛末はベタベタですが、ルコントが描くとなぜか納得。子供と大人の間のファジーな物憂いを演じきったフランスの歌姫、ヴァネッサ・パラディがスバらしい。彼女らしさの象徴であるロングヘアを潔く切り、ショートヘアでイメージを一新させて望んだ心意気は、往年のジーン・セバーグやオードリーヘップバーンを思い起こさせます。


2011.01.20(Thu) - Review on


イヴォンヌの香り

イヴォンヌの香り

1950年代のアルジェリア戦争下、フランスとスイスの国境に近いレマン湖の避暑地で繰り広げられるひと夏だけの官能的ラブストーリー。
戦争から逃れるため、レマン湖の辺にある下宿屋で逗留していたヴィクトール。彼の日課は、湖を見下ろす瀟洒なホテル、エルミタージュのロビーで人間観察をしながら無為に過ごすことだった。そんなある日、彼はファム・ファタールとなるイヴォンヌを見かけ、その透き通るような美しさに引き寄せられてしまう。互いに惹かれ合ったふたりは――――まるで日常から解き放たれたひと夏だけのランデーブーを楽しむかのように――――刹那的な快楽の共犯者となる。彼女を永遠の相手と決めたヴィクトールはイヴォンヌに求婚するも、現実に覚めた感の彼女は、なぜか躊躇するような態度を示すのであった……。
白が眩しいオフショルダーのサマードレス、大人可愛いサーモンピンクでギンガムチェックのドレス、そして裾が円を描く(中はノーパン!)純白のサーキュラースカート――――その悩ましい装いに包まれたイヴォンヌのラストノートが、男心を焦がしまくります。


2011.01.20(Thu) - Review on


髪結いの亭主

髪結いの亭主

日本で初めて公開されたルコント作品。ミニシアターでの上映ながら6万人を呼ぶ大ヒットを記録し、彼の名を国内に知らしめることに。セザール賞7部門にノミネートされるとともに、最高のフランス映画に与えられるルイ・デリック賞を受賞しました。
少年時代に通っていた床屋の女理容師への憧れ――――その想いを胸に抱いて中年になったアントワーヌ。偶然見かけた床屋でハサミを滑らせていたのは、色香漂う美しき女理容師マチルド。
「自分の結婚相手にはこの人しかいない」と心に決めたアントワーヌは店に入り、散髪のさなか、突然の求婚をする。彼女から何の返答を得られないまま店を後にするアントワーヌ。しかし、3週間後再び訪れた彼に対しマチルドは、「あなたの言葉に心を動かされました。あなたの妻になります」と告げるのであった……。
最後まで語られることのないマチルドの過去が、観る者のイマジネーションを掻き立てる。そして唐突なラストシーン。そのあまりにも意外な展開でその場は放心させられるも、ときの経過とともに「なるほどそういうことか」とじんわり感慨させられる。大人の映画ですね。


2011.01.20(Thu) - Review on





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